「中庭、任せてもらっていいですか?」そんな対話から坂の上に建つ家の外構工事が始まりました。
「どうも外構のイメージがわかなくて…」と言うお施主さま。
その一言がすべての始まりでした。
現場でお会いするたび、お施主さまとは色んな話をしました。
一緒に土佐材の見学に行った馬路の山で見つけた苔の話。
ゴルフの合間や近くの山から少しずつ集めてきた苔の話。
朝からシャガを山に取りに行ってきたこと。

まずは、景観を遮っていたリブロックをすべて撤去。既存の擁壁は小叩き仕上げに。

変わりに叩き仕上げの延べ石を並べ
中庭には奥行きをもたせて丹波石を配置。


それが庭の軸となり、ようやく外構の輪郭が見えてきました。
「石臼あるんやけど今からでも使えるかなぁ」
「ぜひぜひ」


お施主さまと対話を重ねながら、日を追うごとに
ああしよう、こうしようという想いがかたちになっていく。
手を動かすうちに頭の中にあった庭が現実になっていく。
この感覚がたまらなく好きです。
植栽は、若生植物園でお施主さまと一緒に選んだお気に入りたち。
日当たりや風通しの調整をしながら、ひと株ずつ仮置きしていく。
お手持ちの石臼を据えた時に全体がひとつに繋がったような気がしました。
仕上げに採取したスギゴケ、ハイゴケ、ミズゴケなど数種類を配置し
目隠しの板塀が仕上がると、まるで山を持ってきたかのような中庭へ。



苔や植栽は山の記憶を宿し根を張り、静かに息づき始めています。
丹波石は庭の景色に奥行きをもたらし、緑の存在を際立たせ、
小さな自然の呼吸が日々にくつろぎを与えてくれます。


「ええわ〜ほんまにええわ〜」
お施主さまのその言葉が、なによりのご褒美でした。
あとは、お引き渡しの日を待つばかりです。