「本格的に動き出したのは、私から施工者のみなさんにバトンを渡してからですね。」
高橋さんの言葉どおり、氷上の家リフォームは新しい工程へと歩みを進めています。

最初に家へ手を入れられたのは、高橋さんご自身でした。
塀を崩し、壁を外し、床板をほどくように取り外しながら、長い時間を支えてきた
構造を一つひとつ確かめる。
壊すというより「ほどく」という表現がぴったりの作業です。
その作業を経て、いよいよ私たち施工者へとバトンが渡され、本格的なリフォームが始まりました。

解体によって小舞が露わになり、屋根裏からは大量の藁が現れました。


土と藁と木という自然の素材を組み合わせ、昔の人々が知恵と工夫で築き上げた構造は、
今もなお力強く存在しています。

まるで家が眠りから覚め、過去の記憶を語り始めたような瞬間でした。
現在は、新たな土壁を塗り重ねる工程へと進んでいます。


単に古さを取り除くのではなく、伝統の技術と美しさを受け継ぎながら新しい命を吹き込む作業です。

土の匂いや質感に触れるたび、家そのものが少しずつ生き返っていくのを実感します。
この家を受け継ぐ過程では、先住の方が地域のご縁をつないでくださいました。
長年この土地を見守ってきたご近所の温かな眼差しや支えがあるからこそ、安心して
工事を進めることができています。
家だけでなく、人と人とのつながりもまた、ここで新たに息を吹き返しているのです。

リフォームとは、単なる「改装」ではなく、過去と未来を編み直す営み。
施工の現場に立ち会う私たちにとっても、その工程を一つひとつ記録していくことは大きな意味を持っています。
そして、この家の歩みをより身近に感じていただけるのが、建築士である高橋さんご自身の発信です。
「女ひとりから始まる古民家生活」
https://www.instagram.com/shiomi_kominka?igsh=a2lobHRmeWpmM205
設計眼と自らの手で家と向き合う高橋さんの姿。そこには現場の私たち施工者も励まされる物語があります。
ぜひご覧ください。

