「甲山を望む家」 O様の家と暮らし

2021.11.10
家と暮らし
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「甲山を望む家」 O様の家と暮らし

「こんなに家づくりを楽しんだ家族も、すくないんじゃないかな」

と甲山を望む家の施主であるO様は話してくださいました。
理想的な家づくりにあたって、O様と私たちあかい工房は長い時間を共に過ごしながら打ち合わせを重ね、工事が始まってからはO様も毎日のように現場に立ち会われました。
時間をかけて対話を重ねた結果、間取りや外観、内観はもちろん、細部まで「好き」をちりばめた、家族で心地よく過ごせる家が完成しました。

O様と私たちあかい工房が出会い、打ち合わせからプランニング、施工に至るまで、一つ一つ丁寧に理想を形にしてきた過程を振り返ります。


■家づくりの背景

生まれ育った地元に、自然素材の家を建てたい。

O様が家を建てたいと思ったきっかけは転勤。実家近くに転移り住み、5年ほど働くことになりました。1年間社宅で住んで地域に愛着が湧いたことや、マンションで子育てする不便さも感じられていたことから、この地に家を建てることに踏み切られました。

夫婦ともに実家が一軒家住まいだったことから一軒家になじみがあり、また自然素材が好きで、家を建てる時には木で作りたいという思いがあったそうです。
そこでO様は、初めは住宅情報誌や住宅展示場などを周られたそうですが、

「いろいろ周りましたが、ピンと来なかった。展示場のモデルハウスは現実味がなくて。どれをみても同じに見えました。工務店の完成見学会に行っても、”これは違うな”と思うことはあっても、これがいい!という家に出会えませんでした。」

と経験をお話ししてくださいました。

その頃、不動産屋さんの紹介がきっかけで、あかい工房とお出会いしました。
初回の打ち合わせ時、茅葺き屋根でできたあかい工房の事務所に来られた際に、その雰囲気を気に入っていただき、
土地探しからご一緒することになりました。
いくつかの土地を見て、いろんな目線で条件を検討。4か所ほどみてまわった結果、家の前が桜並木で眺めの良い、今の土地にめぐり合いました。


■打ち合わせとプランニング

「いっぱい話した記憶しかない。」

2016年6月に土地が決定してから、翌年2月に地鎮祭をおこない上棟するまで半年以上の時間をかけ、じっくりと打ち合わせを繰り返しながら理想の暮らしのためにプランニングをしていきました。

O様はこれまで、どんな家がいいかを具体的には描いていなかったそうです。最初から「こんな家が建てたい」という具体的な希望があったわけではないからこそ、何度も打ち合わせ、時間をかけて検討し、様々なご提案をしながら少しずつ理想を形にしていきました。O様の好みや価値観をもとにディティールまで研ぎ澄ませていきました。

「いっぱい話した記憶しかない。」

とO様は笑いながらお話ししてくださいました。
長い時間をかけての打ち合わせやプランニングも、家を作り上げるプロセスとしてひとつひとつ楽しまれていました。

O様との打ち合わせが進む中、ちょうど里山の家(モデルハウス)ができあがりました。里山の家の見学にお連れすると感性に響き、まさにこんな家に住んでみたい!と気に入っていただいたことがきっかけとなり、里山の家がその後の設計のベースとなりました。

こういった経緯もあり、甲山を望む家は今のあかい工房仕様の住宅建築の方向性が明確になり、デザインへのこだわりや施工技術が集約された一番最初の物件と言えるかもしれません。あかい工房のスタンダードになったスタイルでもあります。


■施工期間の関わり

家は、施主様と一緒に建てる。

「こんなにギリギリまで変更をお願いしていいんかな、こんなにいろいろ言っていいのかな、と思うくらい最後まで要望を聞いてくれました」

と、後のインタビューでO様は言葉にされました。

O様はお子様の幼稚園が近くにあったこともあり、工事が始まってからも足繁く現場に来られていました。次第に現場の職人とも仲良くなり、時には弁当を持ってこられて一緒にお昼を食べることもありました。そうして「家が出来上がっていく様」を間近でご覧いただけたからこそ、施工中も随所に好みのデザインを取り入れていくことができました。時には基礎や構造まで柔軟に変更し、本来垂直に下ろす予定だった壁を土台から斜めにカットしたり、窓が入る予定ではなかった場所に解放感と光を取り入れるための丸窓を設置したりしながら、理想や希望を実現していきました。

また壁紙やタイル、電気スイッチなど、「これでないといけない」ということは一切設けておりません。
奥様が気に入って購入されていた壁紙も使ってほしいとの要望でアクセントとして使い、彩り豊かな空間になりました。

「出来合いの選択肢から選ぶのではなく、すべて相談しながら一緒に考えながらつくれたのがよかった。小さなことでも気になったら何でも言えたし、相談できました。」

と、O様も「チームあかい」の一員として、一緒に自身の家を建てた体験をお話ししてくださいました。


■随所へのこだわり

施主様と一緒に作り上げた、特別な家

私たちあかい工房は施主様の価値観や感性を大切に、外観や内装、構造まで細部にわたって、こだわりを持って家づくりをしています。小さな部分でも妥協してしまうと、最終的にぼんやりした家になってしまう。一つ一つの設計や施工を、どれだけ妥協せずに作っているかの積み重ねが、最終的な家の完成度の高さにつながります。

O様の甲山を望む家は、外壁、天井、サッシ、屋根の色、木部の色使いなど、大きな構成は里山の家をベースに設計。造作家具や内装など細部については、現場でつくりながらご相談する中で、O様の好みやこだわりを反映していきました。

❶外壁

そとん壁について

外壁には自然素材の「そとん壁」を採用。塗りの仕上げは敢えて塗料メーカー指定の方法とは変えた、チームあかいの左官職人オリジナルです。現場で仕上がり見本を作ってO様と相談しながら、好みにあった風合いに仕上げました。

❷ウッドデッキ

ウッドデッキ横の外壁は、車を停めやすく、かつ外観をシャープに見せるために斜めにカット。基礎のコンクリートまで壁のラインと一直線になるよう形成しています。外付けブラインドは上げたときに隠れるよう、軒裏に収納場所を確保。

❸玄関

上がりかまちには木の曲線を活かした素材(耳付き)を使用。下駄箱はブーツや長靴が置きやすいよう棚板を互い違いに配置し、機能と見た目の良さを両立した、見せる収納に。

❹まるい室内窓

施工中に開けることを決めた、暖炉まわりの明り取り用の丸い窓。リビングの風景のアクセントになっています。

❺階段と小さな書斎

階段下にも光を取り込める、ストリップ階段。里山の家の階段をモデルとしながら、手すりをなくしてシンプルに。「小さくてもいいから書斎がほしい」というお声から追加した仕事スペースは、リビングの中にありながら、落ち着いて籠れる空間です。

❻タイル

キッチンの壁には、O様指定の2色のタイルを採用。棚やコンセントの位置は見た目に違和感が無いようタイルの縁や中心にあわせレイアウトしています。

❼アイランドキッチン

アイランドキッチンの造作収納も、施工現場で出たアイデアからつくったもの。ダイニングテーブルの高さに合わせて設計し、ホットプレートなどが使いやすいようコンセントも配置。側面の棚はお子さんたちのランドセル置き場として。

❽天井と床

梁を見せた天井。床は木材の色味を活かし、心材(赤身)と辺材(白太)を交互に並べています。


■最後に

家は、職人だけでは完成しない

チームあかいは、全体のプロポーションを洗練させるのはもちろん、言われないと気づかないような細部までこだわり抜いて設計/施工をします。

しかし、それだけでは施主様の理想の暮らしを実現する家は完成しません。

施主様との対話の中で、何が好きなのか、どんな時に嬉しいと感じるのか、何を重要だと思い、何が嫌なのか。
そういったことをしつこいくらいに聞くことで、施主様を理解し、「この人らしい家」の輪郭を明確にしていきます。

O様の甲山をのぞむ家は、細やかな職人技とO様の「好き」が随所に詰まった、唯一の家になりました。